銀色のギターケースをかつぐひと樹のたましいは月面にある 風呂という海をあごまでもちあげる『夜間飛行』の栞は髪だ てのひらのくぼむかたちは三日月が地のすれすれにあった名残りだ なんとなくえがおの人を避けているえがおはひとを責めたてる顔 ひとりでは広すぎるから夏空のここより先は君の言語野 スープから熱の引くのを待っている湖を立つ鳥を思って にぎったら洗ってすぐの手であった清潔だけど体温じゃない 昼寝したつもりになっていたけれど海は少しも動いていない 音もなく日付は変わる牛乳は飲めない白い液体となる だんだんと風の長さがわからなくなりお別れのことばを言った