第六十五回短歌研究新人賞最終選考通過作

店頭の除菌スプレー中身ではなく習慣へ両手をさらす
液晶へ夕焼け映し夕焼の画像を祖母と思って握る
アイドルの生写真買う写真より生という語を愛したゆえに
バス来るを疑いだした三人のバス待ち人は波を待ちだす
プレゼント包装として葉を添える干からびていてかさかさ鳴る葉
薬局で買うパン・お菓子・ジュースならからだが軽くなっていくかも
電話機の中身をぶちまけたような夜を走ろう声のはてまで
一斤の高級だった食パンの奥深くより獣の臭い
見たときは午後二時だった時計いまごまかすように五分進んだ
さざんかの散るたび海は広がって静かな夜の裾を湿らす

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