第五回笹井宏之賞最終選考候補作「太陽、三割引き」

中古車を解体したらエンジンに金魚が眠る 目はないけれど
廃炉から鴉が白くなるまでの虹のこととか影のこととか
デモ隊の君のあとから君が来る太陽だって少しは動く
雲ひとつ動かないとか告げられて喪服の人がみんな見上げる
駅員は夜からぼくをひっぺがし赤い光をまとえと言った
親指は切りはなしてもすぐ戻る父だった人の好きな手品
あばら骨を動かし指で肺を押す こどものときの空気がぬける
海底に母がいるなら三色の蛍光ペンを波間に置こう
耳のさきすこし尖ってきたような最近石の声が多くて
音だけじゃ撃たれたものは分からない太陽はもうコンビニにある

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