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第64回大垣市文芸祭短歌部門秀作

ひまわりはきっとおしゃべり花だろう幼稚園児が集まってくる

朝日新聞2025年8月26日朝日歌壇川野里子選

親と会う朝に白髪をぬいておく髭は伸ばしたままにするけど

静岡新聞2025年8月26日読者文芸欄短歌大辻隆弘選

履きたての靴下と靴みたいだねこんなに会話かみあわないと

静岡新聞2025年7月29日読者文芸欄短歌大辻隆弘選

星星は見えなくなった砂丘から砂丘の霊は消えてしまって

毎日新聞2025年5月13日毎日歌壇水原紫苑選

図書館の本は苺の蕊だろう触れられる日をただ待ちわびて

文芸かけがわ第19号短歌五首選

骨ばった指は光へふれたのだ彫刻刀は風をふちどる 木版へ谷が刻まれ山ができ一羽の鷹が渡っていった 日と人はかつてことばを交わしたか十二の赤の色見本帳 千年を生きた獣の艶をしてばれんは和紙を傷め泣かせる 雪嶺の十二の刷りを重ねれば遠く聴こえる狼の声

毎日新聞2025年3月31日毎日歌壇加藤治郎選

国道の渋滞のさきゆっくりと帰省してゆくトリケラトプス

毎日新聞2025年3月31日毎日歌壇水原紫苑選

学校へ渡す感情調査票 名のない感情はくもくれんと書く

静岡新聞2025年3月25日読者文芸欄短歌大辻隆弘選秀逸

春風に終わる命の匂い混ぜ午前六時の北へゆく豚

毎日新聞2025年3月24日毎日歌壇水原紫苑選

アッシュールバニパル王も戦争を恐れていたと唄う海豚は

毎日新聞2025年3月17日毎日歌壇水原紫苑選

 配達は闇を怖れるポケットのなかのジッポは桐に鳳凰

徳島新聞2025年3月8日【国際女性デー 痛みを歌う、明日を願う】ジェンダー短歌田丸まひる選入選

児の看護休暇をとれば奥さんは何者なのか問う面談へ ( 徳島新聞 )

中日新聞2025年3月2日中日歌壇島田修三選

いにしえの海岸線を辿ろうと川鵜の列はほぐされてゆく

静岡新聞2025年2月25日読者文芸欄短歌大辻隆弘選特選

雲ひとつなくきれいとか言うときの雲ってそんなにきたないのかな

中日新聞2025年2月23日中日歌壇島田修三選第二席

くやしさに夕日の赤くにじむ帰路ハクキンカイロの火口は甘い

朝日新聞2025年2月16日朝日歌壇馬場あき子選

絵本から絵がなくなって本になるように幼なは子になってゆく

第1回浜田到顕彰きりしま短歌大会佳作

君のいた時間は鳥のなりをしてときどき湖を影で彩る

中日新聞2025年2月9日中日歌壇島田修三選第二席

郵便のバイクに乗ってさざんかの紅濃き闇へつっこんでいた

毎日新聞2025年1月20日毎日歌壇伊藤一彦選

ゆびさきも自分なんだとわかるんだ冬の配達おわりの夜は

静岡新聞2024年11月26日読者文芸欄短歌大辻隆弘選特選

火の精の宿るジャワ産珈琲をからだの奥へ奥へと注ぐ