投稿

RinRin第246号(立夏号2022年5月1日発行)「心の詠み人」梅内美華子選

木蓮のつぼみは放つ異界より押しだされたる八百万の色

テーマ「庭」佳作NHK短歌2021年3月佐伯裕子選

牛丼は一個の庭だ食べるときさまざまなこと思い出される

テーマ「チーム(仲間)」佳作NHK短歌2021年3月佐佐木頼綱選

追いかけた背番号消え残された数字を追って踏み板を蹴る

第二十三回後鳥羽院短歌大賞入選三枝昂之選

読み聴かす絵本は終わり児は眠り海底ひとりとり残される( PDF )

テーマ「駅」佳作NHK短歌2021年2月大森静香選

君は駅ひかりを拾い集めては遠い心をひからせている

毎日新聞2022年3月15日毎日歌壇加藤治郎選

M―1で同窓生が一回戦敗退と知る、生きていたんだ

第十九回吉井勇顕彰短歌大会吉井勇大賞

配達区全域早稲の香に満ちてはちきれさうな郵便の束 ( 香美市 )

第二十三回万葉の里短歌募集「あなたを想う恋のうた」佳作

ぼくなりに大事にしてたでも君は雪の荒野へ攫われたがる ( あなたを想う恋のうた )

第61回静岡県芸術祭文学部門文芸コンクール短歌入選 - 甲太郎歌帖

夏潮 保育園の送り迎えに倦むと妻いつもと違う夕焼の色 牛乳と味噌汁流れこむ闇の底から妻のため息を聴く 自動車は妻が使えば吾は児を園へ迎えに真夏を歩く 青空を遊びきる児の顔に泥ペットボトルの水もて漱ぐ 保育園帰りの吾と児を拾う妻の車は夏潮へゆく

名古屋市短歌会館第十五回短歌大会入選

貸すときは北風色のパーカーを君は春風色に着て来る

テーマ「肴」佳作NHK短歌2021年1月田村元選

男子校一年生の一学期だけを肴に二升目となる

第二十四回長塚節文学賞短歌の部入選

牛丼へ黄身を落として啜り食う賀状配りの出勤前に( 常総市PDF )

毎日新聞2022年2月7日毎日歌壇米川千嘉子選

帰路に見たオリオンすごく大きいな好きな人には好きな人いて( 毎日新聞 )

中日新聞2022年2月6日中日歌壇島田修三選入選

教材のすみ猛禽の顔をしてハイデガー氏が死について説く

第六回富士山大賞2021優秀賞

肩車した児が叫ぶ「ふじさん」と親子ふたりで富士山になる( 富士山大賞PDF )

中日新聞2021年12月26日中日歌壇年間賞最優秀

島田修三選最優秀 春雨を吸う靴でゆくこの町でもっとも月に近い扉へ( 中日新聞 )

テーマ「書店」佳作NHK短歌2021年11月佐伯裕子選

古書店へ手づくりのzine納品しチェコの絵本を買う秋の暮

中日新聞2021年12月19日中日歌壇小島ゆかり選入選

漁期果て日焼け漁師の焼きあげる鯛焼き耳の残りて四角

第8回福岡女学院短歌コンクール佳作

終電の光にふいに照らされて今の私が影絵になった

令和三年熱田神宮献詠祭佳作

前職はなぜ辞めました? 喉を突く剣のような面接の問い

第二十五回葛城歌壇短歌大会佳作

郵便のバイクへ吠える犬は消え陶器の犬が居座っている

第20回土岐市文芸祭一般の部短歌部門文芸祭賞

傷多きサイドミラーに夕焼けと君を映して橋を渡ろう( 東濃ニュース )

第11回青の國若山牧水短歌大会題詠「海」佳作

海風を含み膨らむ郵便を束ねて落とす魚臭き闇( 夕刊デイリー )

文芸おぢや第41号短歌特選(選:小島なお)

一歩だけ蝉時雨から外へ出て自分は父になったと気付く 羽根つきの餃子はありて羽根つきの人間をらず後輩の通夜

第23回美濃加茂市文芸祭短歌の部入選

伸びきったマスクの紐と離縁した人のことばは耳に優しい

毎日新聞2021年11月22日毎日歌壇伊藤一彦選

窓にまだ君の指紋の残りおり雨の消せない体温として

第33回葉桜短歌賞佳作

肩車する児は「つき」へ行けと言う今を逃せば行けないだろう

紀の国わかやま文化祭2021きのくに短歌の祭典東直子特選

神木のうろにはさまるビー玉の映す色みな夜祭の影

紀の国わかやま文化祭2021きのくに短歌の祭典江戸雪選者賞

君へ貸す夜風の色のパーカーのフードのうちにはりつく桜

紀の国わかやま文化祭2021きのくに短歌の祭典日本歌人クラブ賞

病室の折り鶴つくりかえ飛ばす紙飛行機のその先の空

第十八回三輪山まほろば短歌賞松崎英二司選入選

珈琲の水を汲むため山を越え山又山を越えて一杯

第十八回三輪山まほろば短歌賞奈賀美和子選入選

近道はこっちだよって言う君へ遠回りして伝えたいはな

第50回全国短歌大会内藤明選佳作

電柱を辿れば海へ着くだろう春から夏へ変わる口笛

第50回全国短歌大会栗木京子選者賞

生命を宿した過去のないビルで人事へ告げる妻の臨月

第四十回静岡県短歌大会題詠佳作清水正人選

人生を語らぬ祖父の遺言は「カラマーゾフの兄弟を読め」

第四十回静岡県短歌大会自由詠秀作賞・選者賞冨岡悦子選

北風にめくれぬように絵本抱く児を曳き妻の病室へゆく

第39回子規顕彰全国短歌大会坂井修一特選

潮風を電気に変える翼から獣めく声聴こえ夕暮

第二十四回ことばの祭典《短歌の部》梶原さい子選佳作

光呑み音呑み火呑み燃えかすの花火を呑んでなお暗い海

中日新聞2021年10月24日中日歌壇島田修三選入選

土日祝休配の法施行され秋晴れへ干す郵便制服

RinRin第244号(立冬号2021年11月1日発行)「心の詠み人」梅内美華子選

羽根つきの餃子の羽根を羽根もたぬ吾は箸もて音たてて割る

テーマ「道」佳作NHK短歌2021年9月田村元選

配達の道順にない小径ぬけ額あぢさゐに取り囲まれる

中日新聞2021年10月10日中日歌壇島田修三選入選

赤茶けた更地の隅の受箱へ「郵便です」と秋風を差す

第15回全日本学生・ジュニア短歌大会大西久美子選者賞

電車から見ていた町に住みはじめ車窓を意識しながら歩く

第76回尼崎市文芸祭短歌部門入選

向日葵の立ち枯れてゆく雄々しさに習ひて吾は警棒を振る

第41回全国万葉短歌大会万葉賞

木蓮の花は開けり君の名は手話で言ふならこんなかたちに

第57回岐阜市文芸祭一般の部短歌佳作

夜よりも濃い葉の底の枇杷の実よ児のうちあける妻の口癖

テーマ「ファミレス」佳作NHK短歌2021年8月佐伯裕子選

真夜中の小鳥を呼べるファミレスの「話を聞いて」ボタンを押せば

中日新聞2021年9月12日中日歌壇島田修三選第二席

出張し心の裡を診せにゆく名古屋駅前ビルの高さよ

第50回全国短歌大会朝日新聞社賞・黒瀬珂瀾選者賞

ウイルスに負けてもいいよ十字架の赤いネオンは月へ触れそう ( 現代歌人協会 )

テーマ「勝つ」佳作NHK短歌2021年7月佐佐木頼綱選

サッカーの試合に勝った少女らの拭わずにいる頬の春泥

第六十四回短歌研究新人賞予選通過作

シャツにつく抹茶アイスの緑色 海から雨のはじまっている 陸上で生きるヒトではないぼくはうまく呼吸を続けられない

朝日新聞2021年8月8日朝日歌壇馬場あき子選第二首

ふるさとの肉を何度も噛みしめるインドネシアの実習生は

第22回杉原千畝記念短歌大会高校生・大学生の部勇気賞

散ればもう二度ともどらぬ木蓮の花びらのよう生きているとは

第二十三回春日万葉の森歌垣大会人麿賞(春日の森賞)

球場の誰も座らぬスタンドに無言の夏が腰かけている

テーマ「トイレ」佳作秀歌NHK短歌2021年6月佐伯裕子選

潮どきをまだつかめない児のトイレトレーニングのとうめいな渦

テーマ「街・町・まち」佳作NHK短歌2021年6月田村元選

屋根のある町の尽きたらそれからは雨に降られる町のはじまる

中日新聞2021年7月18日中日歌壇島田修三選入選

東京へ行きたいと言う後輩の描く東京ならば行きたい

朝日新聞2021年7月11日朝日歌壇永田和宏選二首目・佐佐木幸綱選第三首共選

周庭の黒い無言を塗り分ける鉛筆が要るそれと光も

中日新聞2021年6月27日中日歌壇島田修三選入選

配達の近道失くす小満の植物たちの伸びるはやさに

テーマ「職場」佳作NHK短歌2021年5月佐伯裕子選

夜の来る郵便室の区分棚はがきの束は明日の手を待つ

題「投げる」特選第一席NHK短歌2021年6月佐佐木頼綱選

郵便の投函のたび指先は世界のふちの春風を押す

朝日新聞2021年6月6日朝日歌壇佐佐木幸綱選・高野公彦選三首目共選

スピノザのレンズ磨きの手つきまね家々めぐり郵便を差す

中日新聞2021年6月6日中日歌壇島田修三選第二席

夏の闇へ指を忍ばせ取り戻す一軒あとへ差すべき葉書

題「握る」佳作NHK短歌2021年4月佐佐木頼綱選

傘の柄を握るてのひらゆるめれば回りはじめる夜の電飾

第36回蒲郡俊成短歌大会入選

海へゆく郵便バイク荷箱からはみ出して咲く向日葵の花

題「心」入選NHK短歌2021年4月大森静佳選

心臓に毛が生えていて春風にそよげば君の町を歩ける

題「比」佳作NHK短歌2021年3月寺井龍哉選

比喩としてシーラカンスを使う夜ラジオはぬるい小雨を告げる

題「眼鏡」佳作NHK短歌2021年3月小島なお選

藍色の眼鏡をたたみ置けば消ゆ街の灯ひとつ友だちひとつ

第26回 「 はがき歌」全国コンテスト一般部門秀作

「読め」と遺した祖父へ―― 遺言の『カラマーゾフの兄弟』を見つけるたびに一巻がない

中日新聞2021年3月28日中日歌壇島田修三選

海際の夜へ配達しに行けば吾のみを照らす春の月かも

浜松市民文芸第66集短歌の部市民文芸賞(村木道彦選)

病院に山茶花の咲く夕刻は山から雨のはじまる予感 点滴に繋がれている児の眠り青い震えは星と呼ばれて 病院の高い窓から妻と児が見下ろす息で玻璃は曇れど ( 静岡新聞 )

題「犬・戌」佳作NHK短歌2021年2月松村正直選

新聞の配達員へ吠えないが郵便夫には吠える柴犬

中日新聞2021年3月14日中日歌壇島田修三選

区分棚から恋の声漏れ聞こゆ定形外で塞ぎきれずに

中日新聞2021年3月7日中日歌壇島田修三選第一席

春雨を吸う靴でゆくこの町でもっとも月に近い扉へ

第9回山上憶良短歌賞入選

病院の壁に貼られた鳥の絵へ児は点滴のない手を伸ばす( 倉吉市立図書館pdf )

第15回「ふるさとを詠う」短歌コンクール審査委員特別賞

ピアノ売る 冬の星座を凍らせた母の歌声こそがふるさと

第60回静岡県芸術祭文学部門文芸コンクール短歌奨励賞

冷蔵庫のなかの空 眠らない児らの集まる公園へ届こうとする満月の蒼 児のひらく夜の絵本は昼間には見つけられない獣がひそむ 真夜中の児はあけたがる冷蔵庫「もーもーいた」と青空を指す カーテンと月の光にくるまれる児にやまなしのかおり耀く 川べりを歩く児の指す宙の果てきっと名前を持たない星座 ( ふじのくに芸術祭2020 )

題「カレンダー・手帳」佳作NHK短歌2021年1月小島なお選

荷箱には収まりきらぬカレンダー脇に挟みて郵便夫ゆく

題「蛇口」第二席NHK短歌2021年2月小島なお選

ハンカチで蛇口を拭いて去る人の肩へこぼれる柊の花

中日新聞2021年2月14日中日歌壇島田修三選第三席

夕刊と郵便の配達員が三日月のもと会釈を交わす

第21回若山牧水青春短歌大賞佳作入選

恐竜が目覚めるほどの恋をしてあとは滅びるだけの僕らだ( 延岡市 )

中日新聞2021年1月31日中日歌壇島田修三選

『城』を読む 冬の東京シモキタを飢えて彷徨う夜もあったな

第22回NHK全国短歌大会題詠入選

結婚し苗字を変えたのに祖父や父と似てきた髪の生え際

RinRin第241号(立春号2021年2月1日発行)「心の詠み人」梅内美華子選

汽水湖に湿る家族は三人で分け合って飲む蜜柑のジュース

中日新聞2021年1月24日中日歌壇島田修三選第三席

ありえないほど真っ白な飛行機が郵便夫らの頭上をよぎる

中日新聞2021年1月17日中日歌壇島田修三選第一席

配達を終え凍る手を加湿器へあてがう指を取り戻すため

中日新聞2021年1月10日中日歌壇島田修三選第三席

宛所にたずねあたらず還されるサンタクロース宛の封筒

中日新聞2020年12月27日中日歌壇年間賞

島田修三選優秀 第四種郵便はこぶバイクから秋の薫りの速達こぼる 小島ゆかり選佳作 虫さされ跡に傷跡日焼け跡こどもの脚は地図で日記だ

題「羊・未」佳作NHK短歌2020年11月松村正直選

菜園の山羊は園児の手を浴びて細き眼にトマトの映る

中日新聞2020年12月13日中日歌壇島田修三選第二席

ワセリンを手指手首に塗りたくる冬の葉書に切られぬように

題「猿・申」入選NHK短歌2020年12月寺井龍哉選

庚申の堂へふかぶかお辞儀する園児の列はさざんかへ消ゆ

題「草」令和二年熱田神宮献詠祭一般の部選外佳作

児の手折る草は名草にあらねども児の手折るゆゑ玻璃の器へ生く

第20回海音寺潮五郎記念「銀杏文芸賞」短歌部門佳作

空はまだ青 おりがみを折ってなにかを児はつくる名など無いけどなにかは赤い 母の折る鶴をほどいてしまう児の指に塗られたクレヨンの白 おりがみはやぶかれみなみかぜに散る折り目に鳥のかたちの記憶 おりがみの紺を柑樹へ添える児よそよげば紙も葉のにおいして 吾のつくる紙飛行機を児は飛ばすすぐに落ちても空はまだ青( 伊佐市 )

第26回宮柊二記念全国短歌大会秀逸Ⅱ

入院の児のともだちはすぐできる点滴のない掌を合わせたら( 魚沼市PDF )

題「変」佳作NHK短歌2020年10月寺井龍哉選

漆黒の爪に針路を変えられた蟬のゆく空どこまでも青

矢切の里文学祭第15回初恋短歌大会秀作

チョコレートアイスを君にかじられて僕の心に残った歯跡

椿大神社第38回短詩形文学献詠祭大辻隆弘選入選

八月の鳥居をくぐり夏帽を肋のくぼむほどに押し当つ

中日新聞2020年10月25日中日歌壇島田修三選

樹の下に憩うウーバーイーツいて胃袋色の太腿さらす

中日新聞2020年10月4日中日歌壇小島ゆかり選第一席

虫さされ跡に傷跡日焼け跡こどもの脚は地図で日記だ

中日新聞2020年10月4日中日歌壇島田修三選第一席

第四種郵便はこぶバイクから秋の薫りの速達こぼる