投稿

ラベル(短歌)が付いた投稿を表示しています

第六十六回短歌研究新人賞最終選考通過作

銀色のギターケースをかつぐひと樹のたましいは月面にある 風呂という海をあごまでもちあげる『夜間飛行』の栞は髪だ てのひらのくぼむかたちは三日月が地のすれすれにあった名残りだ なんとなくえがおの人を避けているえがおはひとを責めたてる顔 ひとりでは広すぎるから夏空のここより先は君の言語野 スープから熱の引くのを待っている湖を立つ鳥を思って にぎったら洗ってすぐの手であった清潔だけど体温じゃない 昼寝したつもりになっていたけれど海は少しも動いていない 音もなく日付は変わる牛乳は飲めない白い液体となる だんだんと風の長さがわからなくなりお別れのことばを言った

毎日新聞2023年6月19日毎日歌壇伊藤一彦選

なんのためか知らずに入るレントゲン部屋の機械はかすかな翅音

毎日新聞2023年6月19日毎日歌壇水原紫苑選

ヒトののち花や星々うまれたと神話は語るパンは黴びゆく

毎日新聞2023年6月19日毎日歌壇米川千嘉子選

渡せずに積み重なった君宛ての手紙の重さとして私だ

毎日新聞2023年6月13日毎日歌壇加藤治郎選

みんな地雷原をぬけた気でいる郵便局の自爆営業

毎日新聞2023年6月5日毎日歌壇加藤治郎選

戦争を愉しむ貌のないこども樹皮へつながるイヤホンは抜く( 毎日新聞 )

第9回詩歌トライアスロン三詩型鼎立部門受賞作 短歌「誤配」他

短歌連作「 誤配 」( 詩客 ) 【抜粋】 泳ぎたい鳥と飛びたい魚いて誰かと話したいヒトがいる

毎日新聞2023年5月22日毎日歌壇水原紫苑選

食道に蝶のつかえている気分あす君は誰かの妻となる

毎日新聞2023年5月16日毎日歌壇加藤治郎選

※この歌はAIによる創作が含まれており審議中です( 毎日新聞 )

毎日新聞2023年5月16日毎日歌壇水原紫苑選

配達の順路は海へ交わって速達へ貼る魚の切手

毎日新聞2023年5月8日毎日歌壇水原紫苑選

人類はうち勝てますか沖へゆく漁り火のなか異星人の火 

毎日新聞2023年5月8日毎日歌壇米川千嘉子選

好きな人に十二年いた恋人は嘘だと知った夕の花冷え

毎日新聞2023年4月24日毎日歌壇伊藤一彦選

あたらしいノートブックを買うように余白の広い詩集をひらく( 毎日新聞 )

毎日新聞2023年4月24日毎日歌壇加藤治郎選

一生を棒に振るとか知らんがな一生分の素振りだ今は

毎日新聞2023年4月18日毎日歌壇加藤治郎選

歯車はかみあわなくて郵便がおおきな池のまんなかに浮く( 毎日新聞 )

毎日新聞2023年4月18日毎日歌壇米川千嘉子選

好きという言葉を君に伝えたら好きの気持ちが減るかも 桜

毎日新聞2023年3月27日毎日歌壇水原紫苑選

宛先のひとつは春の月となり夜の峠へ郵便夫ゆく( 毎日新聞 )

毎日新聞2023年3月27日毎日歌壇加藤治郎選

ちはやぶる神曲を聴きぼくらこのワンルームから恋人となる

浜松市民文芸第68集短歌の部市民文芸賞(清水正人選)

人生へ読点を打つ血と肉となった書籍を紐で縛って 売るための本をバイクにくくりつけ秋風よりも秋風となる 売りがたさもろとも本の値段とす古本市は秋晴のなか 午後四時に魔法は解けて古書売りは足の疲れた父親となる ( 静岡新聞 )

毎日新聞2023年3月14日毎日歌壇伊藤一彦選

冷蔵庫のどこかに賞味期限切れソイミート冷ゆグラムシを読む